食欲、性欲、睡眠欲は、欠くことのできない三大欲求だなどとよくいいます。なかでも、眠らせないことが拷問にまでなるくらいですから、人間の睡眠欲は非常に大きいものです。ですが、わたしたちは、なぜ眠らなければ生きていけないのでしょう。
残念・ながら、この疑問はいまだに研究中であり、明確に説明することはできません。ただ、現在考えられることは、眠ることは、単に体を休息させるというよりも、大脳を休ませる役割が大きいということです。体を休息させるだけなら、検になるだけでもいいはずです。それなのに、一日中休を動かさなくても眠くなるのですから、休むのは脳だと考えてもいいのかもしれません。
休むといっても、すべての脳が活動を停止するというわけではありません。それでは生命が維持できませんから、意識がないだけで、眠っているときでも、脳の、ある部分は働いているわけです。
当然ですが、わたしたちは眠ると疲れがとれ、元気になります。眠っているあいだに疲労を回復し、さらに体内でエネルギーを蓄えているのです。「軽い風邪ならあたたかくして寝ていれば治る」というのも、安静にしていればエネルギーを消費しないばかりか、快適な睡眠のあいだに、本来人間が持っている免疫力が強化されているからです。また、人間の発育を促す成長ホルモンも眠っているあいだに分泌されます。「寝る子は育つ」というのは本当なのです。
眠っているあいだであっても、脳や体はすべて休んでいるわけではなく、起きているときとは違う、眠りのための働きをしています。ですから、眠くなるのは、力を使い果たし、それ以上動けなくなるからではありません。一日のリズムの中に、起きて活動するパターンと静かに休ませるパターンがあり、睡眠は休ませる役割をになっているのです。
つまり、起きているときと眠っているときが交互に訪れることで、体のバランスがとれるようになっているのです。起きることも眠ることも、自然のメカニズムといえます。
睡眠時間は何時間?
睡眠時間は人によってまちまちです。毎日五時間睡眠でも平気だという人もいれば、八時間以上は眠らないと調子が悪いという人もいます。これは、それぞれの睡眠のリズムに個人差があるからです。
一般的には、レム睡眠のときに目覚めたほうが、ノンレム睡眠の深い眠りから目覚めるよりはすっきりするといいます。長く眠ったはず・なのに、起きてみるとぼーっとして目覚めが悪いというのは、深い眠りの状態のときに起こされたからです。そのような人には、レム睡眠のときに目覚める睡眠時聞が合っているということにもなります。
眠りの周期は、ノンレム睡眠とレム睡眠がセットとなり、約九十分を単位として何度も訪れます。しかし、これは「平均」でこのくらいという数字ですから、多少の誤差が出るでしょう。睡眠時間は何時間とこだわり過ぎるのも考えものです。決めつけずに、自分にはどのくらいの睡眠が必要なのかを検討してみてもよいでしょう。
「朝に弱い」人は、長い睡眠時間をとらないと疲れがとれないというタイプがほとんどです。かといって、「朝に弱い」から人より長く睡眠時聞が必要かといえば、そうともいえません。怠惰心や無気力が、目覚めを悪くしていることも十分に考えられます。寝過ぎは、かえって体調を悪くする場合もあるのです。
また、熟睡できたかどうかも問題です。明け方からお昼過ぎまで、十時間近く眠ったとしても、朝になれば鳥も鳴き出し、道路を走る車の音も聞こえてきます。騒音の中では深い限りが得られないから…と、長く眠っても疲れた状態は解消されないでしょう。
これらの点を踏まえると、適度な睡眠時間は七時間程度といえます。「朝に弱い」人なら、それにプラス一時間。「朝に弱い」人の多くは、長時間眠らないとダメだといいながら、前の晩に夜更かしをして、睡眠時間が足りなくなるというパターンに陥りがちです。時間にこだわる必要はありませんが、気持ちよく目覚めるためのいちばんよい方法は、「夜きちんと眠る」ことですから、いきなり短時間睡眠で起きようとしても無理が生じます。
眠り方しだいで4時間睡眠でも平気だという人もいます。忙しくて、どうしても睡眠時間を削らなければならないときなどは、一時的な緊張感のために4時間睡眠でも大丈夫でしょう。もっとも、まれには四時間でちょうどいいという人もいるかもしれません。しかし、毎日のことですから、睡眠はやはり七時間程度はとったほうが望ましいといえます。
「二度寝」は目覚めが悪くなる
朝、ぎりぎりの時間に家を出ることになるのは、目覚まし時計をぎりぎりにセットしているからと考えがちです。しかし、実際は、家を出る一時間前にセットして、一度はその強烈な音に起こされるのだけれども、あと五分だけが、十分、十五分、三十分になり、結局あわてて飛び起きるというパターンが多いのではないでしょうか。
二度寝をすると、そのぶん疲れがとれるのかといえば、そうでもないのです。限りというのは、ノンレム睡眠がだんだん深くなり、次にレム睡眠が現れるという繰り返しを九十分周期で繰り返しています。ですから、一度起きると、この周期は、再度九十分を一セットとして最初から繰り返されるのです。
たとえば、ノンレム睡眠の深い眠りのときに目覚まし時計で叩き起こされたとします。突然深い眠りを断ち切られたのですから、意識も醸臨としています。ですが、もう少しだけ…と二度寝をしても、元の深いノンレム睡眠に戻るわけではありません。また最初の浅い眠りから始まるのです。つまり、あと五分、十分という二度寝は、いたずらに浅い眠りをプラスしているだけで、すっきりと目覚めることはできません。いずれにせよ、目覚めが悪いのですから、目覚まし時計が鳴ったときに起きたほうが余裕も生まれ、よい一日のスタートが切れるのではないでしょうか。
時間だけでなく「眠りの質」も重要
「睡眠時間は七時間程度」は必要だといいましたが、時間だけでなく「眠りの質」も重要なポイントです。通常の睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠の一セットが約九十分周期で繰り返されます。ですが、何かの影響でノンレム睡眠のときに深い眠りに移行できなかったり、レム睡眠の際に目が覚めたりすると、通常の周期で睡眠することができなくなり、眠りの質が悪くなります。
その原因として、まず考えられるのは限る環境です。浅い眠りの段階では音や光に反応しますから、うるさいところで眠れば目が覚めたり、深い眠りに移行しないケースがあります。ですから、昼間より夜のほうが、眠りの環境としてはずっといいわけです。また、暑過ぎたり寒過ぎたりしても同様です。ふとんが重い、枕が固いなど、寝具もこの環境に影響します。
では、環境が整っている場合は、どうすれば熟睡できるのでしょうか。一般的には、眠る前に起きている時聞が長いほど深いノンレム睡眠の量が増えて、ぐっすり眠れるといわれています。
たとえば、一日8時間は睡眠が必要だという人が、たまたま一晩徹夜をしなければならなかったとします。通常の倍の時間起きていたのですから、当然眠りは深くなります。起きて活動している時間の山が高ければ、眠りの谷も深くなるということです。もっとも、あまり山が高過ぎると、谷がないまま一日が終わり、翌日にやっと谷がくるという不規則な状態になってしまいます。
これでは、熟睡する時聞がなくなってしまいますから、やはり質の高い睡眠とはいえません。つまり、朝早く起きれば、夜もぐっすり熟睡できるということです。昼寝をしたり、夜うたた寝をしてしまうと寝つきが悪いというのは、起きている時間が短くなるからです。
